Orion™ 空間生物学: 次世代のイメージングプラットフォーム
著者:RareCyte社
空間生物学とは?
空間生物学は、細胞や遺伝子、タンパク質が組織内および組織間でどのように配置され、相互作用しているかを調べる研究分野です。高度な技術を用いることで、研究者は細胞や組織の機能に関する全体像を把握できます。
組織は多様な機能や状態を持つ異なる種類の細胞で構成され、その空間的配置が患者の健康状態に影響を与えます。この複雑さを解明するには、蛍光の重なりや自家蛍光、そして長時間の染色やデータ取得による低処理速度といった課題が存在していました。
Orion™技術の革新
Orion™の技術は、空間プロテオミクス(spatial proteomics)における、これらの課題を解決し、高速で簡単かつ多重染色されたホール(全)スライド組織解析を提供します。
- 1回の染色とイメージング: 超高速、低コスト、組織の保存が可能
- 標準スライドガラス上でのホールスライドイメージング
- 同じ位置でのH&E染色による、形態とタンパク質の整合性確認
- 数百種類のパネルを柔軟に設計、簡単に使用可能
Orion™の超高速処理と低コストにより、使用頻度や研究の速度が10倍に向上し、製薬や臨床試験において多くの統計データが得られるようになります。
ケーススタディ: 大腸がん免疫療法
Weill Cornell MedicineのDr. Pashtoon Kasiが実施した大腸がん免疫療法の臨床試験では、Orion™が活用されました。この試験では、13色のマルチプレックス(多重)染色を用いた定量解析により、細胞数や細胞の状態、空間的コンテキストが解析されました。その結果、免疫療法後に免疫細胞の浸潤と腫瘍縮小が顕著に確認されました。
- 目的: 免疫療法薬が大腸腫瘍の縮小に与えるメカニズムを手術前に解明すること
- サンプル: 12名の患者から得られた治療前の大腸がん生検および治療後の手術サンプル

- テスト: Orion™による13マーカーのマルチプレックス染色と、その後の画像定量解析で細胞数、細胞の状態、および空間的コンテキストを解析
- 結果: 免疫細胞の浸潤と腫瘍縮小が顕著に見られた

Orion™のワークフロー
Orion™のワークフローは、ハイスループット、ホールスライド組織または連続切片を1枚のスライドに配置し、週に数十枚のスライドを処理できます。
- サンプル準備: 標準スライドガラスにサンプルを配置。処理可能エリアは10 cm²
- FFPEおよび新鮮凍結サンプルに対する標準IHC/IFプロトコル使用。自己蛍光はUVおよびライトボックスで消去
染色
- Orion™専用試薬を用い1回の染色を行った後、カバーガラスを装着し一晩置く
- ※-80℃で最大1ヶ月間保存可能
スキャン
- Orion™で18チャネルを1cm²あたり75分でスキャン
- カバーガラスを取り除き、H&E染色およびスキャンを実施

柔軟なパネル設計
RareCyteのOrion™試薬ポートフォリオには、30以上の組織タイプおよび50以上の疾患に対応する数百種類のパネルが含まれています。カスタムバイオマーカーはArgoFluor染料キットを使用してラベル付けされ、IHCと比較して検証されています。この試薬は小分子であり、抗体とアミン基を介して容易に結合できるため、操作が簡単です。パネル製作に至っては最短で2週間です。
まとめ
Orion™は大量のサンプル処理が可能で、大型組織や複数の組織セクションを1枚のスライドに配置し、週に数十枚のスライドを処理することができるため、臨床研究における大規模なコホート研究や、共同機器室での多数の利用者に対応します。
