AACR Annual Meeting 2026に見る、空間生物学とリキッドバイオプシーの最前線
RareCyteのOrionとCyteFinderが支える、がん研究の新たな展開
― AACR 2026 発表演題から読み解く注目ポイント ―
米国がん研究学会(AACR:American Association for Cancer Research)が主催する「AACR Annual Meeting」は、がん研究分野における世界有数の国際学会です。AACR Annual Meeting 2026 は、2026年4月17日から22日まで、米国カリフォルニア州サンディエゴのSan Diego Convention Centerで開催されます。基礎研究からトランスレーショナル研究、臨床応用まで、幅広い領域における最新の成果が集まり、創薬、診断、バイオマーカー研究、空間解析、AI活用など、多様なテーマが議論される重要な場です。
こうした国際学会において、RareCyte社は空間生物学プラットフォーム「Orion」と、 循環腫瘍細胞(CTC)解析を支える「CyteFinder」を通じて、がん研究の進展を支援しています。今回のAACR 2026でも、空間プロテオミクス、腫瘍微小環境解析、AI画像解析、リキッドバイオプシー、治療応答予測といった分野で、これらのプラットフォームを活用した演題が複数紹介されています。
本記事では、AACR Annual Meeting 2026 の概要とともに、RareCyte関連の注目演題を整理し、現在のがん研究において空間生物学とリキッドバイオプシーがどのような価値を発揮しているのかを紹介します。
AACR Annual Meetingとは
AACR Annual Meetingは、がんの発症機構、腫瘍免疫、病理、創薬、診断、バイオマーカー開発、臨床研究など、がん研究に関わる幅広い領域の研究者、医療関係者、企業が一堂に会する国際会議です。学術的な発表に加え、企業展示や技術紹介も充実しており、研究現場で求められる新しい解析技術や装置、試薬、データ解析ソリューションの動向を把握するうえでも重要な機会となっています。
特に近年は、腫瘍組織内の細胞配置や機能状態を可視化する「空間生物学」と、血液中の希少細胞や循環腫瘍細胞を対象とする「リキッドバイオプシー」の重要性が高まっています。いずれも、従来の単純な平均値では捉えきれない腫瘍の不均一性や微小環境、治療応答性の違いを理解するために欠かせない技術領域です。
RareCyteがAACR 2026で示す技術的な位置づけ
RareCyte社は、組織切片の多重蛍光イメージングによる空間解析を実現する「Orion」と、希少細胞の検出・画像確認・回収に対応する「CyteFinder」を通じて、空間生物学とリキッドバイオプシーの両面から研究を支援しています。
Orionは、腫瘍組織における免疫細胞や腫瘍細胞、周辺微小環境の空間的な関係性を評価する用途に適しており、創薬研究、トランスレーショナル研究、病理解析、バイオマーカー探索などで活用が進んでいます。一方、CyteFinderは、血液やその他液性検体中の循環腫瘍細胞を対象とした検出・解析に強みを持ち、非侵襲的なバイオマーカー評価や治療モニタリングの研究に利用されています。
AACR 2026 における発表演題を見ると、RareCyteの技術は単なる装置紹介にとどまらず、実際の研究課題に対する解析基盤として用いられていることが分かります。とくに、免疫微小環境の可視化、がん幹細胞ニッチの同定、臨床試験における免疫解析、AIを組み合わせた病理画像解析、CTCベースの治療応答予測など、現在のがん研究で重要性の高いテーマが並んでいます。
注目演題:空間生物学関連
今回の発表では、空間生物学を活用した演題が多数含まれています。たとえば、膵がんにおけるCD44v9の時空間的な動態解析では、治療抵抗性に関与する老化細胞由来ニッチの解明が試みられています。また、膵上皮内腫瘍におけるがん幹細胞の局在を空間的に評価する研究も報告されており、腫瘍進展や再発の理解に向けた新たな視点として注目されます。
さらに、患者由来オルガノイドと免疫細胞の共培養系に空間生物学を組み合わせ、CD44v9陽性がん幹細胞を標的とした治療戦略を検討する演題や、17-plex免疫蛍光法を用いて固形腫瘍の免疫環境を包括的に解析する演題も紹介されています。これらは、単一マーカーでは把握しにくい複雑な腫瘍微小環境を、多項目かつ空間情報を保ったまま評価できることの意義を示すものです。
また、正常組織、前がん病変、がんにわたるタンパク質および染色体異常の空間的プロファイリングでは、発がんの初期変化をより深く理解するためのアプローチが提示されています。こうした研究は、病理学、腫瘍生物学、創薬研究の接点に位置するテーマであり、今後の応用展開にも期待が集まります。
注目演題:リキッドバイオプシー・CTC関連
CyteFinderに関連する領域としては、循環腫瘍細胞(CTC)を用いた解析も重要な位置を占めています。今回の演題には、大腸がん患者の血液および脳脊髄液を対象とした新規CDH17 CTCアッセイの開発や、HR+/HER2-乳がんにおけるCDK4/6阻害剤の応答予測を目的としたCTCベースバイオマーカーアッセイの開発が含まれています。
これらの研究は、組織採取の負担を抑えながら、治療経過の評価や薬剤応答予測を目指すリキッドバイオプシーの実用性を示すものです。とくにCTCは、単なる数の評価にとどまらず、形態情報や蛍光情報、分子発現情報を組み合わせて解析できる点に大きな価値があります。RareCyteのソリューションは、このような希少細胞解析において、検出と視覚的確認の両立を可能にする技術基盤として位置づけられます。
AI・画像解析との融合
AACR 2026 の演題からは、空間生物学とAI画像解析の融合も大きな潮流であることが見て取れます。早期メラノーマ診断における空間生物学とAI誘導画像解析の活用や、計算組織学AIによる組織形態特徴と分子マーカーの関連解析など、イメージングから得られる多次元データを、より高い精度で解釈しようとする取り組みが進んでいます。
これは、単に画像を取得するだけでなく、そこから再現性ある定量指標を抽出し、研究や診断開発に結びつけることが求められていることを意味します。空間解析プラットフォームとAIを組み合わせることで、複雑な腫瘍組織の理解はさらに深まり、バイオマーカー開発や患者層別化への貢献が期待されます。
RareCyte関連の主な発表一覧
4月19日(日)
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Poster|Pashtoon Kasi, MD(City of Hope)
新規CDH17 CTCアッセイの開発:大腸がん患者の血液および脳脊髄液のモニタリング
2:00–5:00 PM|Abstract #1082, Section 42 -
Poster|Ugonna Ezuma-Igwe(University of Georgia)
CD44v9の時空間動態の解析により、膵がんにおける老化細胞由来の治療抵抗性ニッチを解明
2:00–5:00 PM|Abstract #LB009, Section 50 -
Poster|Xi Sun(University of Georgia)
CD44バリアントアイソフォーム9が、膵上皮内腫瘍における空間的ニッチ内のがん幹細胞リザーバーを規定
2:00–5:00 PM|Abstract #LB017, Section 50
4月20日(月)
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Podium|David Rimm, MD, PhD(Yale University)
ADCのための次世代ツール:技術革新による応答バイオマーカーの定義
12:30–2:00 PM|Session: Advances in Technologies -
Podium|Y.C. Kao(Frazer Institute, University of Queensland)
空間生物学とAI画像解析を用いた早期メラノーマ診断の高精度化
4:05–4:20 PM|Abstract #4021, Room 29 -
Poster|Haochen Zhang, PhD(Valar Labs)
解釈可能な組織形態特徴と分子マーカーの関連性:計算組織学AIによるバイオマーカー開発プラットフォーム解析
9:00 AM–12:00 PM|Abstract #1453, Section 4 -
Poster|Abigail G. Branch(University of Georgia)
患者由来オルガノイドと免疫細胞の共培養および空間生物学により、CD44v9を標的とした頭蓋咽頭腫治療戦略を支持
9:00 AM–12:00 PM|Abstract #LB124, Section 52 -
Poster|Jaspreet Kaur, PhD(Navigate BioPharma)
臨床試験における17項目多重免疫蛍光法を用いた固形腫瘍の免疫環境の包括的解析
2:00–5:00 PM|Abstract #3972, Section 49 -
Poster|Tanjina Kader, PhD(Harvard University)
正常・前がん・がんにわたるタンパク質および染色体異常の統合的空間プロファイリングにより、正常卵管における異数性の存在を解明
2:00–5:00 PM|Abstract #3533, Section 33 -
Poster|Yana Zavros, PhD(University of Georgia)
カボザンチニブが膵腫瘍微小環境を再構築し、免疫療法効果を増強
2:00–5:00 PM|Abstract #LB234, Section 55
4月21日(火)
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Poster|Richard Van Krieken, PhD(Navigate BioPharma)
H&E染色と新規17項目多重免疫蛍光法の組み合わせによる固形腫瘍の空間免疫プロファイリング
9:00 AM–12:00 PM|Abstract #4157, Section 3 -
Poster|Mantasha Tabassum(University of Houston)
HR+/HER2-乳がんにおけるCDK4/6阻害剤の応答予測のためのCTCベースバイオマーカーアッセイの開発とワークフロー最適化
9:00 AM–12:00 PM|Abstract #5250, Section 42
展示会場での注目ポイント
RareCyteは、AACR 2026 においてブース #1823 に出展予定とされています。展示会場では、OrionおよびCyteFinderに関する情報提供に加え、研究テーマに応じた個別相談の機会も設けられています。空間解析やCTC解析に関心のある研究者にとって、実際の研究課題に即したディスカッションを行える場として注目されます。
とくに、免疫腫瘍学、バイオマーカー探索、病理画像解析、リキッドバイオプシー、治療応答予測といったテーマに取り組む研究者にとっては、今回の発表一覧そのものが、RareCyte技術の適用範囲を理解するうえで参考になります。単なる装置仕様ではなく、「どのような研究で、どのように使われているか」が具体的に示されている点は大きな価値があります。
まとめ
AACR Annual Meeting 2026 におけるRareCyte関連演題からは、空間生物学とリキッドバイオプシーが、現在のがん研究において極めて実用的な解析基盤となっていることが読み取れます。組織切片中の細胞配置や微小環境を読み解く空間解析と、血液中の希少細胞を捉えるリキッドバイオプシーは、いずれも疾患理解とバイオマーカー開発を前進させる重要な手法です。
OrionおよびCyteFinderは、それぞれ異なるアプローチでありながら、がん研究の現場で求められる「多面的な情報取得」を支えるソリューションとして位置づけられます。AACR 2026 の発表は、その活用範囲の広がりを示す好例であり、今後の研究・開発・臨床応用を考えるうえでも注目すべき内容といえるでしょう。
学会情報
学会名:AACR Annual Meeting 2026
会期:2026年4月17日(金)~4月22日(水)
会場:San Diego Convention Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)
RareCyteブース:#1823
※本記事は、RareCyte社の公式情報(AACR Annual Meeting 2026に関する公開資料)を基に作成しています。

