AqasPrime®:モノリス技術が切り拓く次世代抽出・前処理の新基準

             

【前編】AqasPrime®:モノリス技術が切り拓く次世代抽出・前処理の新基準

— 京大発の技術が再定義する「前処理」という工程 —アクアス株式会社

AqasPrime®カラムと分離基材の断面(モノリス構造)
図1 AqasPrime®カラムと分離基材の断面(モノリス構造)
内径0.1 mm モノリス構造
内径 0.1 mm

はじめに

本記事は、次世代の抽出・前処理技術として注目を集める AqasPrime®について、前編・後編の2回に分けてご紹介します。
まず「抽出・前処理」と聞けば、通常はHPLCなど各分析機器にかける前の処理(分液ロートや遠心機、固相抽出、分取クロマトなど)をイメージするでしょう。
複雑でマルチな複合物からの分析は、通常粗分離をしてから本分析に供する作業をします。しかしながら、微量成分のクルード試料などでは難易度が高いケースも少なくありません。
今回は、超高分離能を可能にし、微量なマルチ複合化合物の完全分離に成功した革命的分離法「AqasPrime®抽出・前処理」とその活用法をご紹介いたします。

前編では、AqasPrime®誕生の背景となった京大発技術と、その中核を成すモノリス構造・分離思想に焦点を当てます。
後編(次回)では、実際の応用展開、産業界での活用可能性、SDGsとの親和性、そして今後の展望をお届けする予定です。


AqasPrime®誕生の背景─ AMEDプロジェクトから生まれた京大発ベンチャー技術

アクアス株式会社は、AMEDプロジェクトにおける高麗ニンジン成分の精密分離研究を契機として生まれた、京都大学発の技術開発型スタートアップです。研究現場では、従来の粒子充填カラムを用いた前処理において、

  • 背圧の上昇
  • 流路の詰まり
  • 微量成分のロス
  • マトリクス干渉による感度低下

といった課題が慢性的に存在していました。特に、天然物・生薬・生体由来サンプルなど、複雑なマトリクスを扱う分析では、これらの問題が顕著に表面化します。こうしたボトルネックを根本から解決するため、アクアスはモノリス構造の微細制御に着目し、従来とは異なる分離原理の探索に着手しました。


「両親媒モード」という新しい分離概念

その研究過程で確立されたのが、親水性・疎水性の相互作用を同時に制御する「両親媒モード」という独自の分離概念(特許申請中)です。従来の分離手法は、親水性もしくは疎水性のいずれか一方の相互作用に依存するものが主流でした。一方、両親媒モードでは、

  • 極性の異なる分子群を
  • 同一条件下で
  • 微量レベルまで高精度に

一斉に引き分けることが可能となります。この分離思想を具現化するために最適化されたモノリス構造こそが、AqasPrime®カラムの原型となります。


粒子を「詰めない」構造がもたらす前処理の革新

高速液体クロマトグラフィーを前処として使用する領域では、長年にわたり粒子充填型カラムが主流でした。しかし、複雑マトリクスを扱う場合、

  • 高背圧による流速制限
  • 目詰まりリスク
  • 再現性のばらつき

といった問題は避けられません。 AqasPrime®は、内部を均質な多孔質モノリス構造として形成し、粒子を充填しない連続体構造を採用しています。これにより、

  • 高速通液でも背圧がほとんど上がらない
  • 粘性の高い抽出液でも目詰まりしにくい
  • 成分保持が安定し、微量化合物のロスが少ない

といった特性を同時に実現できます。また、pH耐性・溶媒耐性にも優れており、食品素材、医薬品中間体、植物抽出物など、多様なマトリクスに対応可能な堅牢性も大きな特長となります。

図2-1 薬用ニンジン(高麗ニンジンエキス)の分析例(LC/UV)
図2-1 薬用ニンジン(高麗ニンジンエキス)の分析例(LC/UV)
図2-2 薬用ニンジン(高麗ニンジンエキス)の分析例(LC/MS)
図2-2 薬用ニンジン(高麗ニンジンエキス)の分析例(LC/MS)

複雑マトリクス時代に求められる「ロスのない抽出」

近年、製薬・食品・化学分野では、微量成分の高精度分析がこれまで以上に重要視されつつあります。
日本では紅麹問題を契機に、

  • 食品中不純物
  • 未知成分のスクリーニング、
  • PFAS や残留農薬

といった極低濃度領域の解析ニーズが急速に高まっています。AqasPrime®は、均質な内部流路構造により溶質の偏在や成分ロスが生じにくく、複雑なマトリクスでも再現性の高い前処理を可能にする点で、LC/MS 分析の基盤技術として注目されています。


次回予告(後編)

後編では、AqasPrime®技術のさらなる進化形である

  • マイクロモノリスキャピラリー
  • ライブラリープレート構想
  • 構造解析(NMR・MS・XRD)との連携
  • SDGs 視点での環境貢献
  • 産業界での応用と将来展望

について詳しくご紹介します。
次回、「後編:産業応用と未来展望編」にご期待ください。


お問い合わせ先URL: アクアス株式会社 営業部宛

https://www.aqas.co.jp/contact/


筆者情報

浅岡 広彰
アクアス株式会社 代表取締役&CEO
1964年愛知県生まれ 京都工芸繊維大学繊維学部高分子学科卒
ファルマシア、モレキュラーダイナミクス、ビアコア、クローンテック、イルミナ、シーケノム(アジェナバイオ)、ロッシュダイアグノスティックス、ジェネシスヘルスケア、パックバイオなど主要グローバル企業で経営、営業マーケティングを経験
2024年10月より、アクアス株式会社代表取締役に就任

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